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2010.10.13 / 自分が一番楽しい自宅企画。
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コハク大怪我ネタSS。
何故かスエ視点…っていうか寧ろスエの変化SS?←

※微妙にグロ表現あり注意。

便乗等大歓迎。
陰兎も二手に分かれてる設定にしてみたのでお好きなところに居ると良いです←

きりん。さん宅ダスメーア君を少しだけお借りしました。



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目の前にいるのは、なんだろうか。



どれだけ憎んでも呪っても腕を伸ばしでも、届かなかった。
その筈の、奴が。
自らの身体から溢れだした朱に染まっていた。

常に他者を見下す目は閉じられ、
傲慢な言葉を吐く口から漏れるのは今にも途切れそうな呼吸で、
嵐のような激情と自信に満ちていた身体は、見下して来た筈の他者に支えられ。


……これは、誰だ?


知っている筈の疑問から抜け出す前に、背後から迫る敵の気配。
フィデルがこちらの様子を伺うのが分かった。


『団長ーーーっ!!!!』


知っているのだ。
僕は、見ていたのだから。







厄介な相手。
それが、上空から戦場を一目見た瞬間からの正直な感想だ。
敵の中心は魔法の使い手…それもかなりの高位魔術師。
詠唱自体はそう早くないものの、周囲の守りが固くフィデルでも回りこむことが出来ない。
相手の陣形の取り方が上手いのもあれば、
今回陰兎の手勢が二か所に分かれている状況もあるのだろう。
一人ひとりの能力が高くとも、数の上での圧倒的不利に押されていることは否めなかった。
目の前の獣騎士を槍で薙ぎ払い、再び急降下をしかけたが矢張り届かない。

「フィデル、無理はしなくて良い…引こう」

再び上空に上がる。と、そこで目の端に映った物があった。
――陰兎騎士団団長、コハク。
一直線に向かう先が彼の魔術師であることは疑いようがない。
確かにあの魔術師一人片付けてしまえば戦況は大きく変わる。
だが、この手勢の中、一人で乗りこもうと言うのか?
――いや、一人ではない。
そのすぐ後ろについて走っているのはダスメーア君だろう。
しかし、間に合わない。

魔術師は奴に狙いを定め詠唱を始めていた。
……僕がここから少しでも妨害行為をすれば、止められるかもしれない。
けれど。

――このまま奴が、死んでくれれば。

戦うことも忘れて、僕はただただその様子を見ていた。
奴が近付く。
それについて行く彼が、周囲の敵を蹴散らしながら追いかける。
魔力が集中していく。

そして光が、視界を覆った。

咄嗟に、フィデルに指示を出していた。
魔法によって起きた暴風に任せ一気に後方まで舞い戻る。

奴は。
魔術師を貫いていた。
しかし、その足は大地を踏みしめてはいなかった。

崩れ落ちた魔術師に息がないことは確実だったが、奴にはまだ辛うじて意識があるようで。
錯乱しかけた彼を止めた、ように見えた。
それでも限界だったらしく、全身を真っ赤に染めたままずるずると地面に膝を、手を着いて。

奴の周りに人が集まっていく。
フィデルは、僕は、動かない。動けない。

奴は……あれは、なんだ?







後方に運ばれつつある奴が、僕の目の前を通過して行く。
全身を覆う朱は全身にある裂傷から噴き出している血以外のなにものでもなくて。
それは、僕は初めて見る奴の血だった。

奴を運ぶ者、退路を作る者、追手を食い止める者。
奴を生かすために動く彼らは、一体なんだというのだろう。

気付けば、軋むほどに槍を握りしめていた。

殺せる。
今なら、殺せる。
その後に無事でいる必要なんてない。
僕にはそれしか、ないのだから。

けれど。

フィデルが僕を伺った。
僕は、そっとフィデルを撫でた。

「――行こう」

慣れた浮遊感に身を任せた。
フィデルは、風を切って真っすぐに奴の方へ向かう。
僕の接近に気付いた団員が、一瞬眉を顰める様子まで、何故かはっきりと見えて。


僕たちは、奴を殺そうと迫りくる獣騎士の前に立ちはだかった。


「死なせ、られないんだ……」

これは僕自身のこれまでの全てへの裏切り。
それでもフィデルは、動いてくれた。


それは――僕が望んだからなのだろう。





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というわけでコハクが大怪我してちょっとスエが迷う話でした。
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